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ASMD(酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症)

酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASMD)は、以前はニーマン・ピック病タイプA、A/B、およびBとして知られていた常染色体潜性遺伝疾患です。SMPD1遺伝子の病的変異により酸性スフィンゴミエリナーゼが欠損し、その結果、スフィンゴミエリンおよびその他の脂質が主に肝臓、脾臓、肺に蓄積されます。

有病率・発症率

·         出生10万人あたり約0.4~0.6人の割合で発症すると報告されています。
·         ASMDは性別や人種を問わず発症します。
·        診断率の低さや疾患への理解不足により、実際の発症率はさらに高い可能性があります。

•  発症年齢

·        タイプA:通常、生後数か月以内に発症します。
·        タイプA/B:乳児期または小児期に発症します。
タイプB:小児期から成人期にかけて発症し、タイプAに比べて進行は緩やかです。

 

ASMDは臨床的表現型のスペクトラムが広く、重篤な乳児型(タイプA)では、急速な神経変性と3歳未満での死亡が一般的です。一方、慢性進行型(タイプA/BおよびB)も存在します。
 
もっとも一般的な症状は以下のとおりです:
 
肝脾腫
間質性肺疾患
その他の症状:
呼吸器感染の反復
肝機能障害
低HDLコレステロールによる脂質異常症
血小板減少症(出血傾向)
小児期の成長および思春期の遅延
倦怠感
骨および関節の痛み
骨減少症
 
神経症状はタイプAおよびタイプA/Bにみられます。

ASMDの確定診断には、以下の検査が必要です:

  • 白血球、皮膚線維芽細胞培養、または乾燥濾紙血(DBS)を用いた酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)活性の測定   ⇒ ASM活性が欠損または著しく低下していることにより診断が確定します。¹⁻²
  • SMPD1遺伝子の配列解析により、病的変異が同定されれば、診断の裏付けになります。

酵素補充療法(ERT)は、小児および成人における中枢神経系以外の症状に対して有効な治療法です。 

ERTが利用できない場合、または適さない場合には、症状の緩和を目的とした対症療法が行われます:食事療法やスタチンによるコレステロールの低下、重度の間質性肺疾患に対する酸素投与、血小板減少による出血時の輸血。骨髄移植は肝臓・脾臓のサイズ縮小に効果がみられることがありますが、移植に伴う重篤な合併症のリスクもあります。¹

ASMD患者では平均寿命が短縮されます。
呼吸器障害および肝不全が、タイプBおよびA/Bの主な死因です。³⁻⁵

参考文献

 

  1. Schuchman EH, Desnick RJ. Types A and B Niemann-Pick disease. Mol Genet Metab. 2017;120:27-33.
  2. McGovern MM, Dionisi-Vici C, 他. Consensus recommendation for a diagnostic guideline for acid sphingomyelinase deficiency. Genet Med. 2017;19(9):967–974. https://doi.org/10.1038/gim.2017.7
  3. McGovern MM 他. Disease manifestations and burden of illness in patients with ASMD. Orphanet J Rare Dis. 2017;12(1):41.
  4. Geberhiwot T 他. Consensus clinical management guidelines for ASMD. Orphanet J Rare Dis. 2023;18(1):85.
  5. Cassiman D 他. Cause of death in chronic ASMD (Niemann-Pick B and B variant). Mol Genet Metab. 2016;118(3):206–213.
  6. Mengel E 他. Morbidity and mortality of chronic ASMD in Germany. Orphanet J Rare Dis. 2024;19(1):161.
  7. Pulikottil-Jacob R 他. Survival of patients with chronic ASMD in the US. Mol Genet Metab Rep. 2023;38:101040.