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ポンペ病(Pompe disease)

ポンペ病は、まれな遺伝性のライソゾーム病であり、発生頻度は約4万人に1人と推定されています。ポンペ病は常染色体潜性遺伝形式をとり、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)酵素をコードするGAA遺伝子の変異によって引き起こされます。臨床表現型は大きく2種類に分けられます。乳児発症型(IOPD)と、1歳以降から60歳代まで発症する遅発型ポンペ病(LOPD)です。なお、乳児発症型でも肥大型心筋症を伴わない場合は遅発型に含まれます。

有病率および発生率

• 世界的な両型の有病率は約4万人に1人と報告されています。
• 遅発型ポンペ病の発生率は、台湾で約1/26,466、オーストリアで約1/8,684とされています。
• 遅発型ポンぺ病の頻度は約5万7千人に1人と推定されています。

発症年齢

乳児発症型ポンペ病(IOPD):
·         発症は12か月未満で、肥大型心筋症を伴います。

遅発型ポンペ病(LOPD): 
·         12か月未満で発症するが肥大型心筋症を伴わないケース。
·         12か月以降に発症するすべてのケース。

 

乳児発症型では肥大型心筋症および心不全を呈します。

乳児発症型・遅発型の両方において筋力低下や呼吸不全が見られ、肝脾腫や巨舌などの症状も共通します。
ただし、症状の重篤度や発症時期には差があり、乳児発症型は遅発型よりも重症かつ生命に関わることが多いです。

乳児発症型の特徴

• 生まれてすぐの筋緊張低下(低緊張)
• 腱反射低下または消失
• 関節拘縮や脊柱の変形(反り腰、側弯症)
• 肺炎や上気道感染症
• 呼吸不全
• 肥大型心筋症
• うっ血性心不全
• 心伝導障害

遅発型の特徴

• 進行性の四肢帯筋の筋力低下、続いて横隔膜や呼吸補助筋の障害
• 腱反射低下
• 歩行障害
• 筋痛やこむら返り
• 筋萎縮
• 労作時呼吸困難
• 起坐呼吸
• 睡眠時無呼吸
• 頻繁な呼吸器感染症

血液生化学検査では、クレアチンキナーゼ(CK)、トランスアミナーゼ、乳酸脱水素酵素(LDH)の上昇が見られますが、特異的ではありません。
乾燥濾紙血滴(DBS)を用いたα-グルコシダーゼ活性測定が診断に不可欠であり、GAA遺伝子のシークエンス解析による確定診断が行われます。
筋MRIや胸部X線検査、特に心エコー検査は心臓異常の検出に有用です。

現在ポンペ病の根治療法はありません。
酵素補充療法(ERT)は画期的な治療法であり、標準治療として用いられています。ERTにより患者のQOLは改善されますが、抗体産生成により効果が減弱することもあります。

最も深刻な合併症は進行性筋力低下による呼吸不全であり、最終的には死に至ることがあります。
その他、発達遅延、摂食障害、誤嚥性肺炎、難聴などの合併症も報告されています。
乳児発症型ポンペ病は治療がなければ生命予後は極めて不良で、多くは1歳まで生存できません。

参考文献

  1. Kohler L, Puertollano R, Raben N. Pompe Disease: From Basic Science to Therapy. Neurotherapeutics. 2018年10月;15(4):928-942.
  2. MENA Pompe Working Group ほか. Diagnosis and treatment of late-onset Pompe disease in the Middle East and North Africa region: consensus recommendations from an expert group. BMC Neurol. 2015年10月15日;15:205.
  3. Leslie N, Bailey L. Pompe Disease. GeneReviews [インターネット]. 2007年8月31日更新(2017年5月11日改訂).